神様の一人言

「神は乗り越えられる試練しか与えない」と、遠い昔に誰かが言っていた気がする。
しかし、そんなものは嘘っぱちだ。
私のような、一般的に神と呼ばれるものは基本的に何もしない。ただ、自分を奉る場所に居座り、時代の流れを眺めているだけ。
神頼みなんて言葉もあるが、私達は人間の頼みを聞いたりしない。私達に祈る行動そのものに意味があるだけで、祈り自体には何の力も無いのだ。
だから、どんなに熱心に祈られても病気の親を治すことはできないし、受験に合格させることもできない。
「神は乗り越えられる試練しか与えない」と、遠い昔に誰かが言っていた気がするが。乗り越えてきたのは全て人間だ。
遥か昔の飢饉も、現代も猛威を振るう大災害も。
乗り越えてきたのは、人間達なのだ。
病気の親を治すのは、発達した医療技術と、本人の意思と、周囲の助力だ。受験に成功するのは、本人の努力の力だ。
そして、私は今日もそれを眺めるだけだ。