新年の出会い

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初詣に近所の神社へ赴くと、参拝客の列の中に見知った顔の老爺を見つけた。

「坂道さん、明けましておめでとうございます」
老爺はぎくりと驚いたようにこちらをみた後、なんだお前かと言うように目を細め、あっちへ行けと手首を振った。

「神様が神頼みですか」
僕が尚も食い下がると、坂道老人は鬱陶しそうにか細い声を出した。
「お前こそ何しにきたんだ。新年早々、戦でもおっ始める気か」
「まさか。もう懲りましたよ。この国の神は数が多くてね」
彼は咳払いをした。
「噂は聞いてるぞ、西洋の悪魔と手を組んだらしいな」
「ただの会食ですよ」
「……俺は辞めることにしたんだ」
老人は神妙な顔をしている。
「何をです?」
「神さ」
僕は口をつぐんだ。
「残った力はこいつに譲ることにした。古き川の主だ」
坂道さんの向こうから、短い髪を奇抜にまとめた端正な顔立ちの女が現れた。
「どうも」

僕は運命が揺らぐのを感じた。
ファンタジー
公開:21/01/01 20:00
更新:21/01/01 19:37

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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