ねずみ書房

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「ご都合の良いときにお寄りください」書店から連絡があった。
店に行くとカウンターに馴染みのコンシェルジュが座っている。眼鏡をかけた学者風ネズミ。待っていたかのように一冊の本を出してくれた。探していた詩人の詩集だ。森や狼や鉱石を独自のスタイルで歌い、愛とか恋とか言わずに情熱を伝える詩集だ。
コンシェルジュと雑談をはじめた。最近の社会風潮のことから歴史、科学、哲学、文学のことなど。鋭い批評眼を見せて彼の話題は天衣無縫縦横無尽である。ほとんど聞き役だが飽きない。店員ネズミがハーブティーを出してくれた。
コンシェルジュは話しながら私の関心のありどころを推し量ってくれる。この前の話から書名も言っていないのに私が欲しかった詩集を探し当ててくれた。
歓談ののち席を立った。レジで詩集の代金を支払うと店員が本を綺麗なプレゼント仕様に包装してくれた。この本が私の恋人への贈り物ということまで察してくれたようだ。
その他
公開:21/01/03 07:46

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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