ビードロ餅

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「ぺったん ぺったん」
餅を搗く音が聞こえてきた。
だが、周囲を見渡してもその気配はない。
ただ、ビードロらしきものを吹く少女がいるだけだ。
実は、硝子のように硬い鏡餅を焼いて膨らませて作るビードロ餅を奏でていたのだ。
「餅は餅屋」というとおり、専門のビードロ餅職人が競って美しい音色を出すビードロ餅を作った。その結果、SNSなどでビードロ餅が話題となり、子供から大人まで老若男女問わず大人気となった。
街中では「ぺったん ぺったん」と、ビードロ餅を吹く音があちらこちらで聞こえ、最初のころは風情があったものの、聞き慣れてきたせいか段々と耳障りになってきた。
そして、とうとう国から騒音公害に指定され、ビードロ餅を吹くことが禁止された。
この社会現象を『ビードロ餅を吹く娘』という題で絵にした画家がいた。それは、江戸時代に浮世絵の傑作『ビードロを吹く娘』を描いた美人画の名手、喜多川歌麿の末裔だった。
その他
公開:21/01/03 07:34
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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