縁継ぎ
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「元に戻らないんですか? それでは困ります」
金沢のひがし茶屋街の一角に構える縁継ぎ屋。
彼は私の手の平に錆漆という金継ぎの漆を刷り込ませた。
「安心しろ。君と幼馴染との縁に修復できない穴はない」
いざこざを繰り返して距離が離れてしまった幼馴染と私。どうにか元に戻してもらいたくてここに来たのに……。
彼は私の手を流水にさらしながら丁寧に漆の角を取っていく。不思議と漆が手になじんで肌の一部になりかけているのが分かる。
「元通りにならないと以前の関係にはなれないでしょう?」
職人は手の雫をふき取ると黄色い漆を手の平のしわになぞった。
「それでも、君達の縁はつながれている」
彼は最後の仕上げだと言って金の粉が付いた筆でさらに重ねた。
「縁というのは傷ができて当たり前。修復して強い長い縁になる」
私はきらりと光る手の平を見た。金の粉は肌に浸透してすぐに目立たなくなった。
金沢のひがし茶屋街の一角に構える縁継ぎ屋。
彼は私の手の平に錆漆という金継ぎの漆を刷り込ませた。
「安心しろ。君と幼馴染との縁に修復できない穴はない」
いざこざを繰り返して距離が離れてしまった幼馴染と私。どうにか元に戻してもらいたくてここに来たのに……。
彼は私の手を流水にさらしながら丁寧に漆の角を取っていく。不思議と漆が手になじんで肌の一部になりかけているのが分かる。
「元通りにならないと以前の関係にはなれないでしょう?」
職人は手の雫をふき取ると黄色い漆を手の平のしわになぞった。
「それでも、君達の縁はつながれている」
彼は最後の仕上げだと言って金の粉が付いた筆でさらに重ねた。
「縁というのは傷ができて当たり前。修復して強い長い縁になる」
私はきらりと光る手の平を見た。金の粉は肌に浸透してすぐに目立たなくなった。
その他
公開:20/12/31 23:27
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