結ぶ縁は月の糸

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「昔は月がもっと大きくて、芳醇で、満月の度に、月の雫が銀の糸になって落ちてきたんだって」

ラケットを片付けながら相方が突然話し始めて、私はびっくりした。

「その糸を編んで、お守り作って」

興味はあるけど、それより明日の試合の話がしたい私を横目に、話し続ける。
「それで祖母は大好きな友人にあげようとたんだけど、転んで髪の毛にくっついちゃったんだって、相手のさ」

「どんな風に?」
「前髪のど真ん中。そうしたらそこが銀髪になってしまって、申し訳なくて逃げるように引越して」
「もうずっと入院しているのに、泣きながらそればかり」

私は相方の肩を優しく抱き、前髪の生え際をあげて、真ん中の白髪を見せた。

「祖母亡くなってから、引き継ぐように生えたの」

「ずっと、テニスと相方の話をしていたよ」

流れる涙が、銀の雫となって落ちる。
私達は、それを月の光に照らして編んで、全ての幸せを祈った。
ファンタジー
公開:20/12/31 23:21

七下(ななさがり)

旧「はるぽこ」です。
読んでいただき、ありがとうございます。

400字制限の長さと短さの間で、いつも悶えています。
指摘もコメントも、いただけたらすべてを励みにします、大歓迎です。

【優秀賞】
渋谷コンテスト「夜更けのハイビスカス」

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