神様の苦労

「今年こそリッチでイケメンの彼氏ができますように」
女は３回手を叩き、雑におじぎした。
お前を覚えているぞ。
年に１回だけ現れ、10円玉を１枚放り投げて厚かましい願い事をする女。
本来なら、こんな者は無視するところだ。
願いを叶えるにふさわしい謙虚な人間は大勢いる。
昨年、女は参拝を済ませた後で友人にこうぬかしたのだ。
「この神社ダメだよ。願い事しても全然叶わないから」
当然、縁結びの神の力を思い知らせてやると思ったさ。
だが女は授けた機会を次々にぶち壊した。
「そんなボサボサの髪でコンビニに行くな」
「お前がぶつかったのに何を毒づいとる」
最後は、ただ女の行動にツッコむしかなかった。
仕方なく女の氏神に相談する。
「あの女はそなたの管轄であろう」
「そうだ。両親が良縁に恵まれるように縁と名付けたのにあれではね」
「こっちに来られても迷惑だ」
「そなたも他の神社に行くよう仕向ければいい」