天使の梯子
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「鳴らしてみるか?」
いかつい顔の大男に手渡されたのは、複数の太鼓が円弧を描くように連なったものだった。
僕は今、雲に覆われた薄暗い世界にいた。天国でも地獄でもない、その狭間という感じだ。
「これは?」
「雷神ゆかりの品さ」
「雷神……」
鳴らせばどうなるか考えるまでもない。しかし気が滅入っていた僕は鳴らす事にした。
ここはあたり一面、何もない。問題ないだろう、と僕は荒々しく打ち鳴らした。
鳴らせば鳴らすほど、雷鳴が轟き、稲妻が閃き、雲が切り裂けた。
ひとしきり打ち鳴らした僕は、天を仰ぐ。
雲に生じた切れ間から光が射していた。その光をつたい、ひとりの女性が降りてくる。僕は目を細めた。
「君は……」
「迎えに来たわ」僕より先に逝ってしまった愛しの妻が微笑む。「雷、私たちが出逢った日を思い出すね」
気が付けば大男も太鼓も消えていた。まさか、あの日の……。
見上げた空が、はにかんだように笑った。
いかつい顔の大男に手渡されたのは、複数の太鼓が円弧を描くように連なったものだった。
僕は今、雲に覆われた薄暗い世界にいた。天国でも地獄でもない、その狭間という感じだ。
「これは?」
「雷神ゆかりの品さ」
「雷神……」
鳴らせばどうなるか考えるまでもない。しかし気が滅入っていた僕は鳴らす事にした。
ここはあたり一面、何もない。問題ないだろう、と僕は荒々しく打ち鳴らした。
鳴らせば鳴らすほど、雷鳴が轟き、稲妻が閃き、雲が切り裂けた。
ひとしきり打ち鳴らした僕は、天を仰ぐ。
雲に生じた切れ間から光が射していた。その光をつたい、ひとりの女性が降りてくる。僕は目を細めた。
「君は……」
「迎えに来たわ」僕より先に逝ってしまった愛しの妻が微笑む。「雷、私たちが出逢った日を思い出すね」
気が付けば大男も太鼓も消えていた。まさか、あの日の……。
見上げた空が、はにかんだように笑った。
その他
公開:20/12/31 22:22
縁
まったり。
2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)
壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)
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