ＧｏＴｏ２０２１

全てを先送りにして年を越すのか。
それでも悪いことばかりではなかった。
ステイホームの中、なんと人生はじめての彼女ができたんだ。雑誌の文通欄でなければ知り合うはずもない遠距離の彼女。
彼女は毎年、年を跨ぎながら年越し蕎麦を食べるんだって。それは彼女の地域では当たり前のことなのか。彼女の実家特有のものなのか。
今年はそれを一緒にやろう。２時間前にはオンラインで繋ごう。一緒に蕎麦を啜ろうって。俺は蕎麦を茹でてその時を待っている。
オンラインの意味がいまいち分からなかったけれど、文通相手だから住所だけは分かるんだ。
ソーシャルディスタンスが叫ばれるようになってから、俺は君の家に向かって雨樋を伸ばし続けていた。
そして、蛇口を捻り放水をはじめる。時速３００キロの流水で間違いないはずだ。まだ顔も知らない彼女の笑顔を勝手に思い描き、水でしめた蕎麦を構える。雨樋へ投入するまでカウントダウンをはじめた。