ぴ縁

「ぴえん」
「友達に送るつもりだったその顔文字を、間違えて送信してしまったことがきっかけでしたね。既読が付いたと思ったら、慌てて2階まで駆け上がってきて『家の娘を泣かせたのは誰だ！』。すごい剣幕だったのを今でも覚えています」
「私が『別に悲しいから泣いてるんじゃないよ』って顔文字の意味を説明しても、『本当は何か困ったことがあるんじゃないか』って昔から頑固で、でもあの時に友達のこととか学校の話を真剣に聞いてくれて、やっぱり当時の私は色々悩んでいたのかもしれません」
「アプリで済むから、きょうは別に手紙なんか書かなくていいって言われてたけど、私の思い上手く伝わっていますか？　未熟な私たちですが、これからもどうか見守っていてください」

　花嫁の手紙が読み終えられると、会場の視線は目を真っ赤にして涙ぐんでいる男の姿へと向いた。そしておそらく彼は自分の気持ちを表す言葉をその時ばかりは理解していた。