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これは誰も開けたことのない箱らしい。古びた細い木の箱で、封印的なものなのかぼろい紙が巻かれている。形見とはいえ、こんなものを貰っても……というのが正直な感想だ。遺言によればこれを開けるのは、人生でどうしようもなくなった時にしろということだった。しかし、まだその状況が10歳の自分には想像出来ない。
――時は過ぎ、もう私は30になる。不況で会社をクビになり、このご時世で再就職も難しい。何か売れる物はないか家の中を探すと、あの箱が押入の奥から出てきた。もう開けていいはずだろうと、開封すると中身は綺麗な煙管だった。骨董として売れということだったのだろうか……少し吸ってみるとたちまち意識がなくなった。
目覚めると私は会社にいた。クビになったはずだが……。
「クビ?なに寝ぼけてる、しっかりしろよ新部長」
同期にバシッと背中を叩かれる。
クビどころか昇進している事に驚き、そして煙管は消えていた。
その他
公開:20/12/31 21:40
コンテスト

癒月連理( 岩手 )

2020.3.16にこの場所を見つけて、長文を書くのが苦手な私でもショートショートなら挑戦できるかなと思い、投稿を始めました。

このショートショートガーデンで書くことの楽しさを知る事ができました。
自分なりに色々文章を模索していきたいと思います。
作品を読んで気になった事がありましたら、是非コメントをお願いします、厳しいコメントもお待ちしています。

キシャシリーズ
キシャとカイシャと異文化交流
海の家、森のケーキ屋さん
化かされたキツネ
玻璃屋綺談

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