縁起派女優

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「エントリーNo.8、円都縁(えんとゆかり)です!」
 舞台の中央に立って挨拶すると、7人の審査員が一斉にこちらを向いた。いよいよ最終審査。夢を掴むチャンスだ。絶対に受かってみせる。
「では、さっそく見せてもらおうかな」
 小槌を片手に持った審査員が微笑む。運ばれてきたのは急須と湯のみのセットだった。なるほど、これで私の実力を試すってわけね。
 急須に手を添え、お茶を注ぐ。柔らかな湯気とともに水面に茶柱が浮いた。それも3本。審査員たちが感心したように頷く。
「これはお見事」
「名前も良いですね。しかも番号まで『末広がり』とは」
「ここまで縁起力のある子は久々だ。期待できるぞ」
「私も同意見ですな。円都さん、貴方の縁起には光るものがあります。しかしレッスンは厳しいですよ。ついてこられますか?」
 えびす顔の審査員の言葉に、私は笑顔で答えた。
「はい!きっと立派な縁起派女優になってみせます!」
公開:20/12/31 20:23

猫屋敷りお( 東京 )

文字を書く猫です。
まだ不慣れですみません。
Twitter:@catyashiki_meow

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