初氷

年が明けて、まだ薄ぼんやりと暗い元旦に、私たちはそれを見に行った。
「できてるできてる」
丸い桶の表面に張られた薄い氷。大晦日のうちから用意していたものだ。
「除夜の鐘で祓われた、透明で無垢な空気と風が染み込んだ初氷だよ」
凛として厳かな冷気が、手袋越しに伝わってくる。生まれたての幼い青い空を氷越しに眺めると、希望やら幸せやらが煌めいているような気がした。
「これ。かまくらに使いたい」
「いいね、嵌めてごらん」
お庭のかまくらを少し壊して嵌めてみる。不思議に七色の光が混じり、中をぼんやりと明るくした。
「今年もよい一年になりますように」
いつもなら神社でやるお辞儀をみんなでやった。丸い氷は鏡みたいに、少し私たちの顔を写してる。みんないい笑顔。きっと今年もいい一年だ。