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笑う門で鬼が待ち伏せしていた。
得てしてそんなものだ。
たとえ笑おうが泣いていようが、門の向こうに何があるかなんて観測するまでは確定しない、毎年そんなことを考えているのに、一年後の朝にはすっかり忘れてしまって不用心に扉を開けてしまう。

新たな年を言い訳から始める、というのも大変心苦しいが許して欲しい。
前日の大晦日まで仕事をこなし新年を迎えて眠りにつく。少しだけ遅く起きると待ち構えていた子供たちにお年玉を配り、いつもより騒々しいテレビを眺めながらおせちやお雑煮をいただく。普段は飲まない酒なんかも入って気持ち良くなってきたところで、ふと年賀状でも取りに行くかと思い立ち扉を開けてしまう。その頃には一年前のことなんて頭から抜け落ちてしまっている。

これはやはり、僕が悪いのだろうか。

まあ、泣いてないだけましか、などと思いつつ、すっかり馴染みとなった鬼と新年の挨拶を交わす。
その他
公開:21/01/01 12:04

たそがれる猫の城

主にTwitterで140字小説やマイクロノベル等、短いお話をのんびりと書いています。

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