少女漫画症候群

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「あ〜ちこく!ちこく!」‬‬
 11月7日午前8時26分25秒。私は全力疾走していた。
 右手には学校指定の通学鞄。口元にはもちろん焼きたてのトースト‬をくわえている。
 曲がり角が見えてきたので少しスピードを上げる。
 速度を落とさないまま曲がり角に差し掛かり、私はかっこいい転校生の彼と正面から――ぶつからなかった。
 左右を見渡すと、数メートル先に彼の背中が見えた。
‪「チッ、昨日よりちょっと早く出てんじゃねーよ」‬‬
 呟くと、私は腕時計を操作して時間設定を4秒間ほど早くした。
 明日こそはきっと彼と‬ぶつかって、私は「どこ見てんのよ☆」と言うのだ。そしてなんやかんやあって二人は恋に落ちるだろう。

「あ~ちこく!ちこく!」
 11月8日午前8時26分29秒。私は全力疾走していた。
 右手には学校指定の通学鞄。口元にはもちろん焼きたてのトースト‬をくわえている。
恋愛
公開:21/01/01 02:18
更新:21/01/01 02:39

社川 荘太郎

仕事をしながら1日1時間小説を書く二児の父です(ショートショートや短編、稀に中編)。
twitter⇒https://twitter.com/Ln4Xy

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