縁コン

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「今すぐ帰らせてくれ!」
案内係の男に俺は詰め寄った。
参加者同士、縁のある人だけが集まる縁コン。新しいタイプの大型合コンイベントとして紹介され、俺はホテルたつ宮にやってきた。
挨拶をした女性は、亀山さん、鯛矢さん、平目野さん。皆、きらびやかな魚顔の美人だった。
亀山、鯛矢、平目野。亀、鯛、平目。そして俺は。
「浦島田様?」
「わかってるんだぞ……竜宮城なんだろ、ここ」
確信をつくと、男はキョトンとしたあと、くすくすと笑いだした。
「ロマンチストなのですね」
「なに?」
「今回の催しは、海に縁ある名の方がお集まりなのです。それだけですよ」
男は笑いを噛み殺しつつ慇懃に言う。
俺は途端に恥ずかしくなった。
「もう、ご心配事はありませんか?」
「あ、ああ」
「今日はお土産のご用意もありますよ」
男に促され、俺はホールへと引き返した。
男の胸で、「早乙女 臣」というネームプレートが怪しく光った。
その他
公開:20/12/31 23:55

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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