ボトルキープ

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「純ちゃん、顔真っ赤よ」

ママに言われながら、僕はボトルに親父の名前の書かれた焼酎を飲んでいた。

親父が死んで三ヶ月。生前まともに会話した記憶はあまりない。それでも時々、親父のゆかりのスナックを訪ねて思い出話をする位には自分にも喪失感はあるらしい。

「ちびちび飲んできたボトル、もうすぐ空くわね」
「親父と違って酒弱いから」
「お父さん、昔言ってたわよ。早く息子と酒飲みたいって」

……叶えてやれなかったな。酔いでグルグル回る思考の中で浮かぶ親父の顔。

「……純、起きろ」
「……親父!」
「飲み屋で寝るな。おい、水割り作ってくれ」
「でも」
「夢だったんだよ……」

「……もう閉店よ」
「え、親父は?」
「何言ってんの、あんたカウンターで寝てたのよ。まっ、目を離した間に新しいボトル!油断も隙もない」
「え?」

傍らには新しい焼酎ボトル。そこに書かれた名前は、確かに親父の筆跡だった。
ファンタジー
公開:20/12/31 12:30
更新:20/12/31 19:44

makihide00( 鳥取→東京→福岡 )

30代後半になりTwitterを開設し、ふとしたきっかけで54字の物語を書き始め、このたびこちらにもお邪魔させて頂きました。

長い話は不得手です。400字で他愛もない小噺を時々書いていければなぁと思っております。よろしくお願いします。

Twitterのほうでは54字の物語を毎日アップしております。もろもろのくだらない呟きとともに…。
https://twitter.com/makihide00

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