ミモザ

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「これは私の祖母から受け取ったものでね」
そう語りながら、祖母は手元の木箱をそっと開けた。中には銀色の指輪と、乾燥した黄色いミモザの花が一輪。そして小さな古びた紙が入っていた。場所と共に記されている日付は今年の3月。
「この指輪が交わされてから100年目なの」
叶わなかった恋人同士の記念の品。身内としては正直複雑な気持ちだが、恋の秘密を守ってきた祖母は満足そうにフフッと笑った。
足が不自由な祖母の希望で、僕が木箱を持って約束の場所に行くことになった。車を走らせて隣町の池に到着する。満開のミモザが咲き誇る枝をかき分けながら池のほとりを進むと、水面に反射する光の向こうに人影が見えた。
少し驚いたようにこちらを振り返った若い女性。長い髪が風にサラリと流れる。その手には僕と同じ小さな木箱があった。
お互いの箱を開封する。一輪のミモザ、古びた小さなメモ、そして指輪が、100年の時を経て再び出会った。
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公開:20/12/31 16:18

ケイ( 長野 )

ショートストーリー、短編小説を書いています。
noteでも作品紹介しています。​​
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テーマは「本」と「旅」です。

2019年3月、ショートショートコンテスト「家族」に応募した『身寄り』がベルモニー賞を受賞しました。(旧名義)
2019年12月、渋谷TSUTAYAショートショートコンテストに応募した『スミレ』が優秀賞を受賞しました。
2020年3月、ショートショートコンテスト「節目」に応募した『誕生会』がベルモニー賞を受賞しました。

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