わたしを噛んだゾンビ

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わたしを噛んだゾンビをずっと探していた。ゾンビウイルスに何度も意識を奪われそうになるが、まだ人間のわたしを失うわけにはいかない。

あの噛み方は多分息子だ。噛んだあと、不安になってこちらの顔色を確認する癖。ゾンビになってもちゃんと残っていた。もう一度、きちんと顔が見たい。

世界中でゾンビウイルスが流行した日、息子は小学校から帰ってこなかった。わたしはゾンビと戦いながら息子を探した。そんなある日、わたしは小さなゾンビに右手を優しく噛まれた。

銃声が遠くの花火のように聞こえる。どこかで人間とゾンビが戦っていた。わたしは音の方へ向かおうとした。その瞬間、後ろから銃で打たれた。頭の半分が吹き飛び、脳味噌で風を感じる。全身が動かない。ゾンビでも死ぬんだな……。

するとゾンビの群れの中から一体のゾンビがこちらに近づいてくるのが見えた。背格好が息子に似ているなと思った。そして世界は暗転した。
ファンタジー
公開:20/12/31 15:22

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