人は死ぬけど彼は死ねない

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僕が彼の隣に居ようと思ったのは気まぐれの一種だった。

人が割と簡単に死ぬような戦争ばっかりのこの国で彼は生きていた。家族に恵まれていても、恋人に愛されていても、友達が百人いても死が簡単に訪れる世界において、家族も恋人も友達もいない彼だけが死ななかった。
だから僕だけは、家族になれなくても、恋人になれなくても、友達になれなくても、僕だけは彼の隣にいてあげたいと、気まぐれにも思ったのだ。

「おい」
「なんだい、死にたがりの少年よ」
「お前はなんで死なない」
「そりゃあ、強いからさ」
「でも、お前よりも強い奴を俺は殺した」
「けど、少年は僕を殺さない。そうだろう?」
「……」

少年は不器用だった。心を戦場においてきたような少年は戦いこそ本望だと言わんばかりに、死こそ救いだと言わんばかりに戦争に臨んだ。
けれど死なない、死ねない。愛も恋も情も知らない彼は死に方も知らない。僕はそれを教えない。
青春
公開:20/12/30 21:29

めうっ!

2020/12/13登録。
基本的に思いついたらそのまま400文字書く人なので書き溜めとかプロットは一切ないです。作品投稿をクリックして初めて作品と向き合います。
この文字数になるとショートショートっていうかポエム……いやなんでもないです。

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