いびきを手なづける

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「ママ!パパがまたいびき!」
ソファで寝てしまった夫が豪快ないびきをかき始めた。いつものように私はボロボロの赤い猫じゃらしを握りしめ、夫の鼻辺りで揺らした。すると夫のいびきは、フゴッ、フゴゴッと断続的になった。そして私は猫じゃらしをクルクルと回転させると、部屋の隅にひょいと放り投げた。すると夫のいびきはスッと消えた。
「ママ、凄い」
娘は拍手をした。私は部屋の隅の猫じゃらしを拾い、またクルクルと回しながら夫の元へ戻った。夫は幸せそうな顔をして寝ている。どんな夢を見ているのだろうか。

僕は子供の頃の夢を見ていた。ペットショップのショーケースを覗くと、三匹の子猫のうち一匹だけいびきをかいて寝ている猫がいた。僕は赤い猫じゃらしを握りしめ、「名前はいびきにしよ!」と母に言った。

私は夫の顔の前で再び猫じゃらしを揺らした。夫はまたフガガガと鼻を鳴らした。

そういえば、そろそろ命日だったね。
ファンタジー
公開:20/12/30 16:03
更新:20/12/31 10:55

たらはかに( 日本 )

たらはかに

https://twitter.com/tarahakani
猫ショートショート入選 「猫いちご ・練乳味」
渋谷ショートショート入選 「スク・ラブラブ・ランブル交差点(哀)」とか。

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