年の瀬に貼る

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コンビニで買った肉おまんじゅうを食べて私は意識を失った。
いつもの池だと思って舟を出したらそれはなぜか鏡の上で、オールだと思って握っていたのは長芋だった。夢か現実か。これでは対岸のあの世に渡れない。
そもそも食べたかったのは肉まんで肉おまんじゅうとかいう奇妙な和菓子を食べたのがよくなかった。
まだ逝きたくないなぁ。会社に不意の他界を電話して鏡の淵でぼんやりしているといつのまにかこの世は年の瀬で、私は急かされるように散歩に出た。
街の至る所に「御自由にお持ち下さい」の紙が貼られていて、未練だろうか、私は必要のないカレンダーを次々と手に取ってしまう。いったいこの世には一人当たり何枚のカレンダーがあるのだろう。
私は大量のカレンダーを抱え彷徨いながら、メモ用紙にすることだけは避けたいと思った。そのひとつひとつに必ず貼るにふさわしい場所がある。元日までのカウントダウン。私は最後の一秒まで諦めない。
公開:20/12/31 08:15

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