天国からの生放送

朝起きると、すぐにラジオをつけるのが習慣だ。
今日は、雑音がひどくて入らない。勢いをつけて「ポン」と叩いてみる。

「おはようございます」
あれ？　いつもと違う。どこか聞き覚えのある、低くて渋い声。

「佐藤弘樹さん！」
関西で一番声の低いDJと言われた、名パーソナリティだ。

私は彼の大ファンで、毎回番組を聞いていた。
だけど、昨年亡くなられたはず。

「天国に行ったら、たばこは吸い放題だと思っていました」
「そうでもないんです。これも時代でしょうかね」
愛煙家で有名だった。さぞかし肩身が狭いだろう。

「そういえば、地上はずいぶん大変そうですね」
社会問題もよく取り上げていた。きっと言いたいことがあるに違いない。

「私の考えは……」
突然「プツッ」と音がして、電波が弱くなっていく。
一番肝心なところなのに。

何を伝えたかったんだろう。
答えは出ない。

それでも、明日はやってくる。