Divine Distance ー2021ー

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「随分と静かな三が日になりましたね」
「皆が参りに来ぬ正月がこんなにも寂しいものだったとはな」
「こんなことは今年だけにしたいものです」
「ついでにワシらがやってる、このリモート会議というやつもな」
「まあそう仰らずに。そういえば、うちの神社の裏に住んでる菊池さんの孫のハヤト君、毎年お参りにきてくれていたのに、今年は帰省を控えたみたいで、会えないのが残念でなりません」
「なあに。きっと来年はハヤト君とやらも、今年来れなかった皆も会いに来てくれるだろうて」
「ええ。……あら?噂をしてたら菊池さんが来たわ!ハヤト君の分も、うんとご利益を授けないと」
「あまり張り切りすぎるでないぞ」
「もう、今張り切らないでどこで張り切るというのです?」
「まことにそなたらしい考え方よ」
「だって、これでもこの土地の神様ですもの。では、私はもう落ちますね」
「ああ、また神無月にな」
「ええ、次こそ出雲大社で」
ファンタジー
公開:20/12/30 22:32
更新:20/12/30 22:34

といとう るん

いのちの、その源に触れた瞬間、人は不思議と懐かしさを感じる気がする。
だって、わたしたちはそこから生まれ、そこへ還ってゆくのだからーー。
そんな思いをベースにのんびりゆったり言葉を紡いでいます。
ブログでは、詩を掲載中。今後は400字以上のショートショートも掲載予定です。
https://ameblo.jp/rune-dialogue/

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