影縁劇場

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勤続9年。仕事に慣れたものの何となく先が見えて、わくわく感がなくなっていた。どこか他の場所へ行ってみたいな、でもどこへ?
暗闇に小さな小屋が見える。サーカス小屋だろうか。
「影縁劇場へようこそ。あなたにつながる縁が、影となって見えますよ。」
入口の男性に招かれて中に入ると、森の動物達の影絵が上映されていた。生き生きと動き回るキツネ、ウサギ、オオカミ達に、幼い日の思い出がよみがえる。
パッと明るさが増し、四方八方から照らされて、私の周りに放射状に幾つもの薄い影が生まれた。明りはどこから?ぐるりと辺りを見回し目を凝らすと、街灯、信号、ビル、自動販売機…様々な明りに、少しずつ自分が薄くなっていく。遠くに美しい炎が揺れている。その横で誰かがこちらを見ている。君は誰?私?
ホ、ホー。
ふくろうが鳴いた。炎に向かって歩きだすと、身体と影が少しずつ濃くなって、くっきりと闇に浮かびあがってくるのを感じた。
その他
公開:20/12/30 22:26
更新:20/12/31 06:02

マーモット( 長野県 )

初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
 

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