年に一度の挨拶

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 知らない女性から年賀状が届いた。同じ年くらいの女性で、どこかに旅行に行った時の笑顔の写真だが、まったく見覚えがない。佐藤という名字で、名前も数の多いので間違われることも珍しくないのだが、住所もちゃんと合っているので誰と間違われたか分からない。
 放っておいたら翌年も来た。その後、毎年年賀状は届いた。ある年に、ウェディングドレス姿で写り、名字が佐藤に変わっている。珍しくない名字ではあるが不思議な縁を感じた。
 じきに二人の子供を授かり、子供たちの元気な笑顔の写真は年々成長してゆく。
 差出人の住所に尋ねて行こうともしたが、いざ出かける間際に何か用事が出来て実現しなかった。
 最初のハガキからもう六十年以上が経った今年の十一月、病院から帰って郵便受けを開けてみると、喪中はがきが入っていて、夫が亡くなったのでと記してあった。それで、そうか、年は越せないのかと悟った。
その他
公開:20/12/29 15:29

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