二人きりの廊下で

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同じクラスの佐倉は、常に胸ポケットにボールペンを入れている。「カッコつけてる」とクラスでからかわれていることに、本人は気付いていない。
ここは、幼馴染の僕から言ってあげるべきだ。

「佐倉、そのボールペン外しなよ。変に思われてるぞ」
「私の勝手でしょ」

佐倉は中学生になっても、自分が正しいと思ったことは曲げない性格のままだ。もう少し、周りに合わせることを学んで欲しい。

「でも、斉藤に目をつけられたらいじめられるぞ」

斉藤は女子のリーダー的な存在だ。

「だから外しなよ」

それでも佐倉は首を振った。どうしたものかと悩んでいると、佐倉は珍しく、あっ、と言葉を詰まらせた。

「こうちゃんが『なくすなよ』って言ったから、大事にしてるの」

ポケットから取り出したそれは、昔、俺がプレゼントしたものだった。

佐倉は背中を向けて歩いて行った。
良かった。俺の顔が赤くなっているのがばれなくて。
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公開:20/12/29 08:55

だーわだ

男性。
社会人です。

趣味で小説書いてます。

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