会心の一撃

　とある繁華街。二人の男が睨み合っていた。サングラスをかけた男が、柄シャツを着た男の胸倉を掴んで怒鳴る。
「やんのかおらぁ！」
「やってみやがれってんだコラァ！」
　サングラスが右手を振り上げた。瞬間、路地裏から凄まじい勢いで何かが飛び出す。茶トラの猫だ。
「くらえ、おらぁ！」
　怒声とともに茶トラが柄シャツに飛びつき、その頬に向かって鋭いパンチを繰り出した。男の頬にピンクの肉球がぶつかる。
「ぷにぷにじゃねぇか、コラァ！こっちもくらえコラァ！」
　柄シャツも負けじと叫び、左手を振り上げた。すると今度は別の黒猫が飛び出し、サングラスの頬にもふもふの手でパンチする。
「いいパンチじゃねぇか、おらぁ！毛並みも良くてよぉ！」
「そっちこそ爪のお手入れ完璧じゃねぇかコラァ！」
　二人はしばらく睨み合い、やがて満足した様子で夜の闇に消えていった。このあたりは、喧嘩は多いが怪我人は出ないことで有名だ。