残党

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とある海賊伝説が残る村。遠い昔にここに乗り込んできた海賊は、美しい娘たちをさらっていった。…そこで現在この村には不細工な住人達しかいないのだと、真しやかに語られている。

観光客の多数は面白半分に、どれだけ不細工揃いかと見物に来る。それで不細工に特化した土産を盛んに売り上げているのだから、村人たちも逞しい。しかし年頃の私としては不細工のくくりで語られることがとてつもなく嫌なのだ。

ある晩夢に美しい娘が出てきた。娘はさらわれた子で、この村に隠されている薬を飲みなさいと言った。

次の日指示された寺院に行き薬を見つけた。早速飲むとみるみる体が変化した。奇妙なのは夢の娘と同じ顔になったことだった。

私の噂を聞いてやってきた男は、私の顔を見るなり高笑いした。「やはりここに来る運命だった!」そして一枚の写真を私に突きだした。写真は古びていたが、今の私の顔をした娘と男の面影をした男性が映っていた。
公開:20/12/28 23:29

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

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