ギターの精霊

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「お姉さん、いいのあるよ!」
イケメンのお兄さんに呼び止められた。

ギターを買おうと、楽器の街・お茶の水まで来た。
あまりの数に驚いて、休んでいたところだ。

「このギターは、ただのギターじゃないですよ」
彼はボディをゆっくりと撫でた。

「ご主人様、御用ですか?」
ギターの精! アラビアンナイトじゃあるまいし。

「叶えたいことがあるなら、言ってください」
「うーん……。押尾コータローさんみたいに、カッコよくギターを弾きたい」
我ながら、大きく出過ぎだ。

「かしこまりました」
精霊は姿を消した。

「このギターは、あなたのものです」
「困ります。なんだか怪しいし」

「そういう訳にはいかないのです」
「あなたは精霊に願い事をした。契約は成立しています」
私にギターを渡すと、足早にその場を去った。

予約していたレッスンの日、先生が教室から顔を覗かせている。

あの時のイケメンだった。
ファンタジー
公開:20/12/28 22:52
更新:20/12/28 23:25

ろっさ( 大阪府 )

"Plain words, honest hearts."ことばもこころも飾らない

誰かのこころに届く物語を綴っていきます。

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https://note.com/leyenda_rosa


 

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