無限図書館

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圧倒される光景だった。
巨大な本の壁が、遠く視界の先まで延々と続いている。

「ようこそ、知の宝庫、真実の楽園へ」
図書館員の女性が足音なく近づいてきて言った。
「見学? それとも入会されるのかしら」
「見学です」

彼女に連れられて館内をぐるりと見て回る。見学、と言っても、どれだけ彷徨ったところできりはない。むしろ時間が経てば経つほど、見学できる割合は少なくなっていくのだ。

無限図書館。ここにはこの世界で人が手にしたあらゆる知識が保管されている。誰かが何かを知るたびに、新たな本が、本棚が、際限なく加えられて行くのだ。

僕は彼女の目を盗み、一冊の本を抜き出した。両親を殺めた男の記憶。

「持ち出し厳禁ですよ」
気がつくと女がすぐ後ろにいた。
「真実を知らなくてはならないんです」
本を開けば二度とここから出ることはできない。

僕は彼女の目をじっと見た後、本を握りしめて駆け出した。
ミステリー・推理
公開:20/12/30 07:00
更新:20/12/30 06:59

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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