戦国武将ゆかりの地

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「いい天守閣だ」
「ええ、今治城ですから。そして、あちらが藤堂高虎です。彼が築城したんですよ」
 ガイドは男を指した。鼻の大きい男だ。
「ああ、彼が藤堂高虎の役をしていると」
「いいえ。あれが藤堂高虎です」
 ガイドは笑顔だ。
「え。本人」
「もちろん」
 私は失笑した。
「馬鹿な。あれが本物ですって?」
「そのとおり」
「証拠はあるんですか」
「彼が自分を藤堂高虎と名乗りました」
「それなら、私こそが高虎だ、と名乗り出たら?」
「あなたは高虎ではありません。もういますから」
「いやいや……」
「ならば、高虎に直接聞きましょう」
 ガイドは高虎を呼び寄せた。
「あなたは高虎ですね」
「はい。私は藤堂高虎です」
「ほら」
「分かりましたよ、あなたが高虎ですね。はい」
 ガイドは満足した。

 まったく、世の中は変わり者だらけだ。もっともそのおかげで、私が本物の高虎と気づくものもいないのだが。
その他
公開:20/12/30 02:18

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