お面の告白

2
9

「け、圭子さん!」
「ん?」
憧れのクラスメイトがぼくの顔をじっと見つめた。
「あの、ぼくと、そのぉ」
ダメだ⋯⋯やっぱり勇気が出ない。

ぼくは縁結びの神社で購入した狐のお面に頼る事にした。こいつを被れば、たちまち告白する勇気が湧くという必勝アイテムなのだ。
かぱっ!
「ケーン、麗しき我が姫よ!、余の伴侶となりて鳥居の向こうで添い遂げようぞ、ケーン、ケーン!」
「えっ、なに、どうしちゃったの!?」
ダメだ⋯⋯全然使い物にならん。
慌ててお面を外そうとしたが、顔に引っかかってうまく外れない。
「うーん」
すぽーーーん!
「好きです、ぼくと付き合って下さいっ!!」
お面が外れた勢いのおかげか、ついに告白する事ができた。
「うん⋯⋯いいよ」

こうしてぼくは圭子さんと付き合い始めたのだが、どうも腑に落ちない事が一つだけあった。
例の狐面が、自信のないぼくそっくりのお面に変わっていたのだ──。
青春
公開:20/12/29 17:53
更新:20/12/30 02:40

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
https://twitter.com/ShaTapirus
https://www.instagram.com/tapirus_sha/
http://tapirus-sha.com/

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容