ボス

「ボスこちらをどうぞ」
　ボスは彼女を一瞥した。
「食事のご用意ができました」
　心地よさそうに食事をとる。
「そろそろお眠りになられてはいかがでしょう」
　しばらくして眠りに入ったようだが突然叫び始めた。
「いかがいたしました」
　彼女はすぐにかけつけ用意周到に整えていた準備の品を差し出し機嫌を損なわないよう落ち着いて対応した。
　彼女の日常は、常にボス有りきの生活だった。
　長い年月か経過した。
　ある日ボスが事故にあい救急搬送された。
　駆けつけた頃には、ほとんど意識はなく、そのまま再びと目を開けることはなかった。
　静寂に包まれる病院内で、彼女のすすり泣く嗚咽だけが響き渡った。
「私よりも早く亡くなってしまうなんてなんて親不孝なのよ」
　彼女が尽くすべき唯一の存在であり自分にとってのすべてであった息子は、幸せそうな笑顔を残してそのまま長くない生をおえた。