そーでしたか

　袖すりあうも他生の縁、といいますが、縁を待つ時代は終わりました！　逆転の発想で縁を作りましょう！　袖がすりあったのだから縁がある！　
　就活でも婚活でも「ご縁がなく」と言われ続けた私には、一昔前のような胡散臭い呼び込みがずいぶん魅力的だった。

　時代がかった扉を開け会場に入ると、無数の「袖」が並んでいる。会社員が大手企業の「袖」に年代物の上着の「袖」をなすりつける。母親に連れられた男は古風な羽織の袖でいろんな振袖を触っている。
　仕事の縁も結婚の縁も、両方ほしい。早速私も新調したスーツの袖を、よさそうないくつもの「袖」にすりあわせてみた。

　しかし数日すぎても、相変わらずソデにされるばかり。安くない会費を払ったのに効果がない！　喜色の会社員を押しのけ主催者に苦情を言うと、彼はあの日と同じ私のスーツを見て
「これはこれは、立派な現生の袖ですね！　次の生での良縁は約束されたも同然！」