禍の子

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開闢よりも前から蒼穹の先には、そこの人々から「楷」と呼ばれる天界があった。嬰児は、儀式を受けて、楷に相応しい者かを見極められる。
くすんだ色の瞳をしていたので、祭司は「禍の子」だと言い、その嬰児を地上に降ろした。それを押しとどめる者はいなかった。
児童養護施設で育てられた彼は、楷人と名付けられた。
「楷人くんの瞳って墨色なのね。今の子は、茶色みがかった色の子が多いけど。素敵な色ね」
そう褒めてくれるマザーは、御伽話を子ども達に聞かせた。
「地上から天界に渡れるのは、鳥だけです。天界の人間も一度地上に落ちてしまえば、戻ることができないのです」
楷人はそれが、御伽話ではないことに気づいていた。
儀式を受けている時から、彼は周りの人々の言葉を理解していた。
「マザーあなたは何者?」
「ごめんなさい。付いてきてしまった。姿形は全く違うけれど、あなたのお母さんよ」
楷人は初めてその瞳から涙を流した。
ファンタジー
公開:20/12/27 16:24

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