円もユーカリもない

私は道端に置かれた段ボールを覗いた。

誰か可愛がって下さい

捨てコアラだ。なんと無責任な飼い主だ。段ボールの中の小さなコアラは黒オリーブみたいな目で見つめてきた。しかし飼育にはユーカリの若芽が必要で、一日に八万円かかる。一年で2848万円。生粋のコアラマニアの私でさえ責任が持てない。泣く泣く段ボールから離れた。そして角を曲がると、また段ボールが置かれていた。

誰か経営して下さい

捨て動物園だ。なんて無責任な園長だ。しかしピンときた。この動物園を経営すればコアラを飼育できる。

私は捨て動物園を肩に担いで、コアラの場所に戻った。しかし、そこには捨てオーストラリアを握った少女が捨てコアラを左腕に抱きつかせていた。縁が無かったと悔しがる私に少女は声をかけてきた。

「じゃんけんする？」

大人げないが、こんな機会は人生で一度きりだ。少女の提案に乗った。



だが、運も無かったようだ。