君の手紙が聴こえない

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僕達四人は手紙を持って、折ルゴールを用意した部室に集まった。折ルゴールとは折った手紙を差込口に入れハンドルを回すと、手紙の内容をメロディーにして鳴らす楽器だ。

拓海の手紙は雄大な行進曲、早紀のはポップなワルツ、そして美優のは甘い旋律のカノンだ。僕は美優の手紙に酔いしれていた。

「美優の手紙、音がしないんだけど」
「私も」

ラブレターを入れると好きな相手にしか聴こえない【もぅ好きっトーン】で曲が鳴るという。と言う事は美優は。

「お前は?」
「…聴こえない」

僕の言葉を聞いた美優は恥ずかしそうにハンドルを止めた。

何故あの時あんな事を言ったのか、埃のかぶった折ルゴールを見て恥ずかしくなった。そして引っ越しの準備を終え、僕は一通の手紙を書いた。そしてお腹の大きくなった妻の横で折ルゴールのハンドルを回した。二人向けの優しい子守歌が鳴った。

「ありがと」

美優は僕の手を握った。
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公開:20/12/28 20:47
更新:20/12/31 11:01

たらはかに( 日本 )

たらはかに

https://twitter.com/tarahakani
猫ショートショート入選 「猫いちご ・練乳味」
渋谷ショートショート入選 「スク・ラブラブ・ランブル交差点(哀)」とか。

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