席、どうぞ。

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朝の通勤ラッシュ。今日は運よく席に座れた。
…と、思ったけど次の駅でお爺さんがやってきた。
僕は席を譲った。名残惜しいけど、年配者に席を譲るのはマナーだからね。
「ありがとうございます」とお爺さん。ゴホゴホと咳き込み、辛そうだ。
「すみません。少し風邪を引いてしまいまして」
いえいえ、気にしないで下さい。

次の駅に到着すると今度はガラの悪そうな男が入ってきた。席に座っている人を威圧し、どかそうとしている。
「良かったら、せき、どうぞ」
お爺さんが男に席を譲った。男は当たり前のようにドカリと腰を下ろす。
そしてスマホをいじり始めた男だが…顔色がどんどん悪くなってくる。
ゴホゴホと咳き込み、次の駅で腹を押さえ降りて行った。
お爺さんが改めて空いた席に座る。
「あの男に儂の堰も譲ってやりました。おかげで儂も元気になりました」
驚く僕にお爺さんは『堰へ』と書かれたチケットを見せてニヤリと笑った。
公開:20/12/28 19:41
堰へ・チケット

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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