時間のつぼみ

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「これは時間の花。この花は現在つぼみの状態です。これを咲かせた方を採用します」
就職採用試験。その最後の問題として試験官は私達の前に見た事のない花を置いた。
困惑する受験者。水を与えたり、花弁を開こうとしたりしている。無駄だ…だってこれは造花だ。咲かせられない。
自虐的な笑みが浮かぶ。そうか、そうやって理不尽を突き付けて不採用にしようと言う腹か。
溜息を吐き、諦めかけたその時だ。隣の席の子がつぼみにノートを破っては貼り付けていく。
私の視線に気づき「君も一緒にやろうよ」と誘ってきた。私も遊びに興じる事にした。
ずいぶんと夢中になっていたようだ。気付けば他の受験者の姿はなく、私とその子、あと試験官しかいなかった。
「貴方達を採用します」
試験官が私達に言った。
「理不尽をチームワークで楽しく乗り越えてこそ仕事です。貴方達には素質がある」
試験官は私達が咲かせた時間の花を見て満足そうに頷いた。
公開:20/12/28 19:39

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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