妖怪えんころりん

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泣く子も黙る、妖怪えんころりんとは俺様のことさ。人間の良縁を切っては喰らう恐ろしい妖怪だ。縁を喰われた人間の末路は酷いもんさ。

今宵も縁を喰おうと物色していたら、公園の茂みに此奴が居た。裸のまま横たわって居た。

俺は此奴の縁を喰ってやろうと心を覗いた。一番失いたく無い縁が一番美味いのだ。しかし驚くことに此奴には良縁どころか悪縁すらなかった。
よく見るとまだ生まれて間もないようだ。大方産んだが育てられぬと母親に縁を切られ捨てられたのだろう。惨めな赤子だった。

俺は此奴に縁を分けてやることにした。不憫でならなかったのだ。母にも愛されない、まるで妖怪になる前の俺のようだった。
たまには妖怪も良いことをするのだ。
俺は縁を赤子に分け与えた。

「大変!こんな所に赤ん坊が!まだ助かるわ」


えんころりんは忘れていた。
昨日この場所で臨月の妊婦の縁を食べたことを。それが大層美味であったことを。
その他
公開:20/12/28 19:04

小川さら

口下手で面白い事が言えません。
だから書いてみます。

忌憚のないご意見をお待ちしております。
 

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