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暗い水の中にいた。
冷たさは感じなかった。
心地よい浮遊感だけが下腹部の奥の方にあって、私はただそれに身を任せているだけだった。
遥か上の方にボンヤリとした光があって、それはきっと月なのだろうと思った。
腕をかざそうとしたが、何かが絡みついて動かない。
縁藻だ。
どうしてここに生えているのだろう。
縁藻は、特殊な条件下でしか生息しない。人の縁そのものに根を張り、数を増やす。
けれど、水の中にそんなものが転がっていることは少ない。
だからこんな数の縁藻が群生しているのは見たことがない。
奪った研究ノートにもそんな記載は無かった。あの日、私が湖に突き落としたあの子のノート。いつも研究で私の先にいた…。
いまや縁藻は、私の全身に絡み付いていた。その緑色の群生帯は、まるで私の身体を後ろから羽交い締めにするように数を増やしていった。
ああ、そうなのね。
私を迎えにきたのね。
縁藻は音もなく揺れた。
ホラー
公開:20/12/28 18:47

エビハラ( 宮崎県 )

平成元年生まれ、最近はショートショートあまり書いていませんでした汗
ログインできてよかったぁ…

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