ゆからんことを考えるな

窓の無い小さな部屋に僕と彼女は閉じ込められた。

「時間内に目の前の相手との関係を見つけよ」

全くの初対面の女性だ。出身地や性格、名前、交友関係、様々な事を聞いても彼女とは何一つ共通点が無い。無情にも部屋に水が流れ込んできた。いつしか水は首の辺りまで迫っていた。

「もう、やめませんか」
まさか彼女は自殺志願者か？
「何言ってるんだ。これからの人生楽しい事沢山あるはずだ」
「ありませんよ」
確かに今までの彼女の人生は不幸なエピソードしかなかった。
「まだ僕は恋人もいないし」
「じゃあ恋人になってあげますよ」
「え？」
彼女は微笑みながら呟いた。
「見知らぬ二人で一緒に死ぬ事になるなんて、これも何かの縁ですね」

突然ピンポンと音が鳴り、部屋の水が一気に引いた。

「縁ある脱出ゲーム成功です」

彼女は茫然と引いていく水を見ていた。僕は濡れた彼女に色気を感じていた。

「変な目で見ないで」