褒められた好意じゃない

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「オマエはあたしのこと褒めないね」
 ワシの隣のオババが溜息をつきながら、そう言った。
 オババは続ける。
「せっかくあたしは褒めたら百円あげるババアなのに。あたしはね、褒められたら嬉しいんだ。だから百円あげるんだよ。今風に言えば、win-winさぁ」
「オババのやっている行為は褒められた行為じゃないからな、ワシはオババのことを褒めん」
「褒めなさいって! ……それならば何でそんな毎日あたしと一緒にいるんだい」
「ワシがオババの近くにいれば、何か邪魔しちゃいけないと思われ、オババを褒めてくる連中が減るんだ」
「オマエのせいで褒められチャンスが減っていたのかい! 一体何が目的なんだい!」
 そうだな、そろそろ言わないといけない時期なのかもな。
 ワシは意を決し、
「ワシはオババのことが好きなんだ。他のヤツに褒められてほしくないんだ」
「オマエ、あたしの全財産を欲しがるなんて、強情な男よ……」
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公開:20/12/26 13:11
コメディ

伊藤テル( (日本) )

株式会社コルクにて『変人作家の担当』電子書籍出版
(デジタルノベルコンテストvol.1 受賞)
第2回いがらしみきお賞 受賞(詩誌・ココア共和国にて)
第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト 短歌部門 佳作
新潟日報文学賞 詩部門 選外佳作
第15回「1ページの絵本」 佳作
小さな小さな文学賞vol.2 優秀作品
BluemingBox「実熊瑠琉」 審査員特別賞

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