ゆかりロード慶太くん号線

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「おや、新顔だね。仕事関係? 趣味関係?」
「趣味の方です。盆栽」
「ああ。じゃあすぐ『お呼ばれ』かも。慶太くん、最近ハマってるから」
僕が言うと、隣り合った新顔は微笑むように柔らかな色を見せる。
『新顔』といっても、僕たちに顔はない。
僕らは慶太くんがなにかと巡り会うたび生まれる。生まれた順には先も後もなく、同じ道の上をお呼びがかかるまで進み続ける。
道程に伸びる数えきれない幾本もの光の帯。その一本一本が、僕らだった。
ぱっと色が弾ける。
新顔がきゅっと細く縒られ、糸になって上空へ吸い寄せられていく。
「いってらっしゃい」
新顔を送り出し、僕らはまた道を進む。
僕らのすべてが糸になるわけじゃない。だけど、僕らがムダではないことを、僕は知っている。

慶太くんが進む。僕らも進む。
たくさんの糸が伸びる上空と、光彩に溢れる道程を見つめる。

ちかちか、と空間が光って、また一本の帯が生まれた。
ファンタジー
公開:20/12/26 12:40
更新:20/12/26 16:42

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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