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おぞましいとは思わなかった。むしろ、美しいと目が離せなかった程だ。その空間を引き裂くような鋭利な輝きを手に入れてみたい。

「痛いっ」
由起子は電車の中で脛の辺りに痛みが走った。混雑した車内では身動きが取れずに駅まで我慢する羽目になった。自宅がある最寄り駅に着いて、足元を見るとストッキングが細く伝線していた。
「うそ、やだ」
薄く血も滲んでいる。誰かが悪意を持って傷つけたのだろうかと考えると、熱いシャワーを浴びても芯まで温まる事は出来なかった。
次の日、脚に傷がある女が目の前で電車に乗り込んだ。なぜだか目を奪われて、その女の行方を探していると叫び声がした。車内が騒然とし混乱する中で、折り畳みナイフを持っていた男がすぐに捕まった。男が喚くすぐ横を通りすぎた女の脚に傷があったのを由起子は見逃さなかった。女が着ているコートの袖口に尖った紅い爪が無敵に見えた。
ホラー
公開:20/12/26 00:10
更新:20/12/26 10:09
伝線 伝染

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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