メンタル・スキャン

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「これがその……ですか?」
「ええ。息子さんのものです」
ぷるぷると震えていて、いかにも頼りない。ある意味想像通りと言えばそうなのだけど、実際目にすると、やめとけばよかったという後悔のほうが強い。
豆腐メンタル、とはよく聞くが、最新のモデリング技術によって3D化された息子の精神構造は、まさしく豆腐、しかも絹ごしだ。最近流行りの、オシャレな丸い形をしている。
十年間引きこもっていて、もうどうすることもできないが、何か少しでも可能性が見いだせないだろうかと期待をしてここにやってきた。最近、夢を見るのだ。息子がまだ幼く、毎日が絶え間ない笑いと、希望と、未来への期待に満ちていたあの頃の夢を。
「こちらがお父さんのものです」
なぜ、私のまで? 見るとそれは角ばった、どす黒く乾いた羊羹のようだった。
端の方が僅かに欠け、白い内容物が少しくのぞいている。

「希望はあなたの中に」
ドクターは言った。
SF
公開:20/12/27 07:00
更新:20/12/27 07:01

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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