心願成就の夢

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女は醜かった。
醜いが故に人目を避けて孤独な芸術家の道を歩んだ。彼女が描く絵にはいつも美しい人物画の姿があった。そんな容姿に憧れて女はうっとりとした表情を浮かべながら、涙して描き続けた。

ある夜、ふいに女は夢から醒めて絵筆を取り画架に向かった。そこには描きかけの美しい王子の姿が。女の眼はみるみるその絵の中に吸い寄せられるように一心不乱になって描き続けた。そうして、出来上がった肖像画だが何かしら物足りなさを感じて彼女は完成した絵に手を加えた。

するとどうだろう。
絵の中の人物は、みるみる間に香気を漂わせ女の目の前に現れたではないか。そう、彼女が最期に手を加えたのは天使の羽だった。今しがた、女の命が潰えたのだ。
夢の中の天使の王子は彼女の手を引いて空へ舞い上がる。その姿はいと美しき、見目麗しい姫君そのものだった。

こうして、醜いがゆえに芸術家の道を選んだ彼女はやっと結ばれたのだ。
ファンタジー
公開:20/12/25 06:06
更新:21/02/27 22:15

水鏡かけら( 日本 )

執筆のリハビリがてらに、書いております。
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