ＡＬＬ Ｌｉｇｈｔ！

最初は腹いせに近かったと思う。
景観保全や防災対策を目的とする電線地中化事業が、ついに終わりを迎える。
電線のラピュタたるこの町も、既に送電は地中ケーブルに移行し、文字通り空っぽの城だった。
聖夜の鐘と共にシステムが完全停止、除夜の鐘を聞く頃には、電線も鉄塔も姿を消す。俺達が血と汗と膨大な時間を費やした砦を、ＡＩロボットがあっという間に解体していく。

使い道のないまま頓挫した新機能。開発部がクビを覚悟で談判し、全社一丸の『祭り』になった。終わりゆく者の意地。先の見えない闇に光あれと。

――１２月２４日２４時０１分。
「ねぇママ。大っきいツリー！」
見上げる視線の先、巨大な鉄のツリーが輝く。航空障害灯が『Ｓｉｌｅｎｔ ｎｉｇｈｔ』に合わせて色彩を変え、電線の被材に組み込んだ無線ＥＬが町に光のリボンを掛けた。


『状況良し。降下します』
特等席から煌めく街に親指を立て、命綱を握り直した。