彼が信号恐怖症になったのは

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 交差点で、警官が老人を説得していた。
「いや、まぁまぁまあね。僕も通るたびに思いますよ。この交差点の信号短すぎだろ、ってね。でも……」
「儂は測ったんじゃ。太い道の信号は青の時間が五十秒、細い道の信号は十秒だ! たいして車通りは変わらんのに、何でこんなに差がある。理不尽だろ!」
「はいはいはい、でもね、でも、それを本人に直接言っちゃいかんでしょう?」
 警官は頭上を見上げた。
「ほら、見て。あなたの罵詈雑言ですっかり自信なくしちゃって、青信号と赤信号混ざって色の識別不能じゃない。事故るわ、渋滞するわ、散々よ。それにほら、信号の中の人見て。普段は二足歩行なのに今地面に両手ついちゃってますよ。蹴りも入れられたって。謝りなさい」
「儂は謝らん!」
「早く謝ってぇぇ……」
 このやり取りが二時間以上続いている。

 その夜、フラストレーションが爆発し、警官は信号無視で捕まった。
 そこからだ。
ホラー
公開:20/12/24 16:19

shomin shinkai( 日本 )

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